教祖は、綿木の実から綿を集める時は、手に布を巻いてチュッチュッとお引きになったが、大層早かった。又、その綿から糸を紡ぎ機を織るのが、とてもお上手であった。
糸を括って紺屋へ持って行き、染めてから織ると模様が出るのであるが、中でも最も得意とされたのは、玉に分銅、猫に小判などという手の込んだ模様ものであった、という。
これは、教祖が綿を紡いで織り物を作る様子から、天理教の教えの大切な心を伝えているお話です。
【言葉の意味とやさしい説明】
綿木(わたのき):ふわふわの綿ができる植物。今でいう「コットン」。 チュッチュッとお引きになった:綿を手でていねいに素早く集めたこと。 紡ぐ(つむぐ):綿から細い糸を作ること。 括る(くくる):糸を束ねてしばること。 紺屋(こうや):染物屋さん。糸に色や模様をつけるところ。 玉に分銅、猫に小判:とても細かくてきれいな模様の名前。昔の人気ある模様。
【ひとつずつ説明する】
教祖さまは、手仕事がとても上手だった → 綿を集めるとき、手に布を巻いて素早く、でもていねいに作業された。 糸を作り、染め、模様を出して布を織る技術を持っていた → 糸に工夫して模様をつけるには、先に計算して括ってから染めるという、高度な工夫が必要。 「玉に分銅」「猫に小判」など、見事な模様も織れた → 難しい模様でも、楽しみながら、工夫しながら作られた。
【ぜんぶまとめると】
教祖さまは、ふだんの生活の中でもていねいに、工夫して、心をこめて働いていたことがわかります。しかもそれを楽しんでされていたのです。
また、どんな細かい仕事でも手をぬかずに一つひとつを大切にするという生き方をされていたことが伝わってきます。
【たいせつな教え(ポイント)】
日々のくらしの中にこそ、信仰の心がある → ふつうの家事や仕事も、心をこめてすることが「つとめ」になる。 ていねいに、喜んで働く心 → どんな作業も、楽しみながら、工夫してやることが大切。 美しいものをつくるには、心と手間が必要 → それは、人を喜ばせるためであり、自分の心も豊かになる。
逸話編はいつも思うのですが、読むタイミングその時々で自身の解釈が変わるものと思っています。