ある時、教祖は、飯降伊蔵に向かって、
「伊蔵さん、掌を拡げてごらん。」
と、仰せられた。
伊蔵が、仰せ通りに掌を拡げると、教祖は、籾を三粒持って、
「これは朝起き、これは正直、これは働きやで。」
と、仰せられて、一粒ずつ、伊蔵の掌の上にお載せ下されて、
「この三つを、しっかり握って、失わんようにせにゃいかんで。」
と、仰せられた。
伊蔵は、生涯この教を守って通ったのである。
【現代の言葉にする】
ある日、教祖は飯降伊蔵(いぶり いぞう)さんに、
「伊蔵さん、手のひらを開いてごらん」
とおっしゃいました。
伊蔵さんが手を広げると、教祖はお米のもみ(三粒)を持って、
「これは“朝起き”、これは“正直”、これは“働き”ですよ」
と、一粒ずつ手のひらにのせられて、
「この三つの心を、ぎゅっとにぎって、なくさないように生きなさいね」
とおっしゃいました。
伊蔵さんは、生涯この教えを守って、生きていきました。
【ひとつずつ説明する】
「朝起き」って何?
→ 朝、きちんと早く起きること。 天理教では「朝起き」は、心を整える大切な習慣だとされています。だらだら寝ていると、心も体もゆるんでしまうから、気持ちよく一日を始める心がけが大切だという教えです。
「正直」ってどういうこと?
→ うそをつかない、心に正しく、まっすぐに生きること。 だれかに見られてなくても、正しいことをする心。自分の気持ちにも、まわりの人にもウソをつかず、まじめであることが大切です。 「働き」ってどんな意味?
→ 体を動かして、一生けんめい何かをすること。 ただの仕事だけじゃなく、家族のため、人のため、社会のために、力を出してがんばることも「働き」です。自分の役目をしっかり果たすことが大切だよ、という教えです。
【ぜんぶまとめると】
教祖が伊蔵さんに教えられた「朝起き・正直・働き」は、毎日の生活でとても大事な三つの心がけです。
この三つは、特別な才能やお金がなくても、だれでも今日からできることです。
でも、それを一生つづけるのはとても大変。でも、伊蔵さんはそれを生涯ずっと守って、天理教の教えを実行していったのです。
【たいせつな教え(ポイント)】
「朝起き」は心と生活を整える第一歩 → いい一日は、朝の心がけから始まる。 「正直」は信頼と平和をつくる心 → どんなときも、うそをつかない、まっすぐな心が大切。 「働き」は感謝の心を行動で表すこと → 自分が生きていること、周りの人へのありがとうを、「働くこと」で表す。 三つの心を手の中に持って生きることが信仰の実践 → 信仰とは、難しいことを言うよりも、毎日の中でこの三つを大切にして生きることなんだよ。
この教えは、学校でも家庭でも、どんな場面でも大切にしたい「生き方の基本」です。