慶応四年三月初旬、山中忠七がお屋敷で泊めて頂いて、その翌朝、教祖に朝の御挨拶を申し上げに出ると、教祖は、
「忠七さん、昨晩あんたの宅で女の児が出産て、皆、あんたのかえりを待っているから、早よう去んでおやり。」
と、仰せになった。
忠七は、未だそんなに早く生まれるとは思っていなかったので、昨夜もお屋敷で泊めてもらった程であったが、このお言葉を頂いて、「さようでございますか。」と、申し上げたものの、半信半疑でいた。が、出産の知らせに来た息子の彦七に会うて、初めてその真実なることを知ると共に、尚その産児が女子であったので、今更の如く教祖のお言葉に恐れ入った。
【現代の言葉にする】
慶応四年の三月のはじめごろ、山中忠七さんが教祖の屋敷に泊まっていました。次の朝、教祖にあいさつをしに行くと、教祖は言いました。
「忠七さん、昨晩あなたの家で女の子が生まれましたよ。家族はみんな、あなたの帰りを待っているから、早く帰ってあげてください。」
忠七さんは、「まだ生まれるはずがない」と思っていたので、泊まりに来ていたのです。でも教祖のお言葉を聞いて、「そうですか」と返事をしたものの、まだ半信半疑でした。
すると、息子の彦七が「女の子が生まれました」と知らせに来て、本当にその通りだと知り、しかも女の子だったことで、教祖の言葉の正しさにとても驚き、感心しました。
【ひとつずつ説明】
忠七さんが泊まりに来ていた
→ 教祖のおそばで大切なお話を学んだり、おつとめをしていたのかもしれません。
教祖が、赤ちゃんが生まれたことを知っておられた
→ 忠七さんはまだ知らなかったのに、教祖は神様の心を通してすでにご存じでした。
教祖が「早よう去んでおやり」と優しくおっしゃった
→ 家族のことを思いやって、すぐ帰ってあげるように教えてくださったのです。
忠七さんは最初は信じられなかったけれど…
→ 実際に息子から知らせを聞いて、本当にそうだったと知りました。
その子が女の子で、教祖のお言葉通りだった
→ 性別まで当たっていて、教祖の不思議な力とありがたさを感じました。
【まとめ】
忠七さんは、まだ赤ちゃんが生まれると思っていなかったのに、教祖はそれをすでに知っていて教えてくださいました。そして、その赤ちゃんが女の子であることまで、教祖はわかっておられました。この出来事を通して、忠七さんは教祖のありがたさや、神様の働きのすごさを感じたのです。
【大切な教え(ポイント)】
・神様は人の思いや出来事をすべてご存じであること
・教祖は神様の心を伝えてくださる方であること
・教祖の言葉には、心に気づきを与える力があること
・自分の思いだけでなく、神様の声を信じて行動することの大切さ
・家族を大切に思う心、思いやりの心も教えられていること