十二下りのお歌が出来た時に、教祖は、
「これが、つとめの歌や。どんな節を付けたらよいか、皆めいめいに、思うように歌うてみよ。」
と、仰せられた。そこで、皆の者が、めいめいに歌うたところ、それを聞いておられた教祖は、
「皆、歌うてくれたが、そういうふうに歌うのではない。こういうふうに歌うのや。」
と、みずから声を張り上げて、お歌い下された。次に、
「この歌は、理の歌やから、理に合わして踊るのや。どういうふうに踊ったらよいか、皆めいめいに、よいと思うように踊ってみよ。」
と、仰せられた。そこで、皆の者が、それぞれに工夫して踊ったところ、教祖は、それをごらんになっていたが、
「皆、踊ってくれたが、誰も理に合うように踊った者はない。こういうふうに踊るのや。ただ踊るのではない。理を振るのや。」
と、仰せられ、みずから立って手振りをして、皆の者に見せてお教え下された。
こうして、節も手振りも、一応皆の者にやらせてみた上、御みずから手本を示して、お教え下されたのである。
これは、松尾市兵衞の妻ハルが、語り伝えた話である。
【1. 現代の言葉にする】
「十二下り(じゅうにくだり)」のおつとめのお歌ができたとき、教祖は言いました。
「これが“つとめ”の歌です。どんなふうに歌えばいいか、みんなそれぞれ思うように歌ってごらんなさい。」
そこで、皆が思い思いに歌ってみました。すると教祖は、
「みんな歌ってくれたけど、それは違います。こういうふうに歌うのです。」
と、ご自身で声を張り上げて正しい歌い方を教えてくださいました。
次に教祖は、
「この歌は“理(ことわり)”の歌です。だから理に合わせて踊るのです。どんなふうに踊ればいいか、みんな考えて踊ってみてごらんなさい。」
と言いました。そこで、皆が工夫して踊ってみました。教祖はそれを見て、
「みんな踊ってくれたけど、理にかなった踊りではありません。こうやって踊るのです。ただ体を動かすだけではなく、“理をふる”のです。」
と言って、ご自分で手振りをしながら正しい踊り方を見せてくださいました。
このようにして、歌い方も踊り方も、まず皆にやらせてみてから、ご自分が手本となって教えてくださったのです。
これは松尾市兵衛さんの奥さん、ハルさんが伝えてくださったお話です。
【2. 言葉の意味とやさしい説明】
十二下り:天理教の「おつとめ」の中で歌われる十二の節のある歌。 つとめ:人をたすけるために行う大事な「いのり」や「おこない」。 理(ことわり):神様の思い・自然のしくみ・正しい道すじのこと。 理に合う:神様の考えや自然のきまりに合っていること。 理を振る:ただ体を動かすのではなく、心と意味をこめて動かすこと。
【3. ひとつずつ説明】
教祖は歌をみんなに任せてみた 教祖はまず、どんなふうに歌えばよいか、みんなに自由にやらせてみました。 みんなの歌を聞いて教祖が教えた みんなの歌い方を聞いて、教祖は「ちがう」と言い、ご自身で正しい節を歌ってみせました。 踊りも自由にやらせてみた 歌だけでなく、踊り方も「思うようにやってみて」と言われました。 正しい踊りは“理”に合うもの 踊りを見た教祖は「ただ動くだけではなく、神様の“理”に合うように踊るのです」と教えてくださいました。 “理を振る”とは? 踊りは、神様の思いを心と体で表すものだから、ただの動きではなく、意味とまごころがこもっていなければならない、ということです。 教祖は手本を見せてくれた 最後に、教祖自らが正しい手振りをして、みんなにお手本を示してくれました。
【4. まとめ】
教祖は、まず人々に自由にやらせてから、間違いや違いを正して、正しい形を見せてくださいました。ただ口で教えるだけでなく、自分の体で教えてくださる教え方でした。そして、大事なのは「形」だけではなく、「心」や「理」がこもっていることだと教えてくださったのです。
【5. 大切な教え(ポイント)】
自由にやらせた上で、正しい手本を示す教え方 人に気づかせ、成長させるためには、まず任せてみることが大切だという教えです。 ただの歌や踊りではなく、“理”をあらわすもの 信仰や行いは形だけでなく、心と意味が大切であると教えています。 “理を振る”=神様の思いを体と心であらわす おつとめは、体の動きに心をこめて行う神様へのまごころの表れです。 教祖ご自身が“行いで示す”姿勢が大切 言葉だけでなく、実際の行動で教えることが、本当の教え方だとわかります。